Volcanology

火山学

「ディクティタキシティック組織の再現実験:浅部貫入マグマの結晶化における蒸発凝縮作用」

桜島火山(鹿児島県鹿児島市)
桜島火山(鹿児島県鹿児島市)

火山は,たびたび人間界に重大な被害を及ぼします.最も顕著なものは,爆発的噴火による人的被害でしょう.記憶に新しいところでは,2014年の御嶽山(長野県・岐阜県)の噴火で58名の方々が亡くなりました.また,桜島火山(鹿児島県)は有史以降に何度か大噴火をしており,1471年の文明噴火,1779年の安永噴火,1914年の大正噴火ではそれぞれ多数の死者が出ています.

一方で,爆発を伴わない噴火による人的被害が発生する場合も多くあります.たとえば,1991年の雲仙岳(長崎県)の噴火では,溶岩ドームの崩壊で発生した火砕流によって43名の死者が出ました.また,桜島周辺などの日常的に降灰のある地域では,火山灰の中に含まれる微結晶が肺に入り込み,珪肺や肺がんなどの肺疾患の原因になると考えられています.

御倉山(青森県十和田市)溶岩ドームの岩石
御倉山(青森県十和田市)溶岩ドームの岩石

火山の噴火が爆発的になるか否かを支配する大きな要因のひとつが,岩石の浸透率です.マグマが地中の岩を割って上昇してくると,深部ではマグマに溶けていた水などが減圧に伴ってガスとして大量に出てきます.ここで,浸透率が低い,つまりガスを通しにくい岩石は火道の「ふた」となってしまい,ガスが逃げられずに圧力が上がって最終的に爆発につながる可能性が高くなります.逆に岩石がガスを通しやすければ,脱ガスが進み爆発に至る可能性が低くなると考えられます.

この浸透率をもっとも大きく左右するのが,岩石の空隙率です.平たく言えば,穴が多い,あるいは大きいほどガスが通り抜けやすいということです.溶岩ドームをつくる岩石の中には,写真のように肉眼では緻密に見えるけれども拡大すると実は多孔質でスカスカというものがあります.これはディクティタキシティック組織(ギリシャ語で「網のような配置」を意味する diktuon taxis からきている)と呼ばれています.この組織があると岩石の浸透率が上がり,脱ガスが進みやすくなることがわかっています.

水熱実験装置(東北大学)
水熱実験装置(東北大学)

したがって,ディクティタキシティック組織がいつ,どのような環境で形成されるかということがわかれば,噴火が爆発を伴うか否かを予測する一つの指標となり得ます.

この条件を探るため,私たちは火道浅部あるいは溶岩ドーム内部におけるマグマの滞留を模擬した結晶化実験を行いました.具体的には,軽石ガラスを外熱式の水蒸気ガス圧発生装置(通称,水熱装置)で加熱・加圧して,水蒸気にさらしながら定温定圧に保つという実験です.

ガスから析出したシリカ
ガスから析出したシリカ

実験の結果,ある限られた低温高圧条件下では水蒸気のみの雰囲気のもとで多孔質なディクティタキシティック組織が形成されることがわかりました.このとき,同時にシリカの結晶であるクリストバライトの気相成長も見られました.つまり,メルトが蒸発してスカスカになるかわりに,ガスの中を物質が移動してシリカ結晶が析出したのです.前述の通り,このシリカ結晶は肺疾患を引き起こす原因となります.実験より,加熱開始からクリストバライトの析出が起こるまでは,数日というタイムスケールであると判明しました.

この研究結果は,溶岩ドームあるいは火道浅部のマグマプラグが形成されてからの爆発性を見積もる材料になります.さらに,ディクティタキシティック組織が見られる火山灰の供給源,つまり結晶化が進んだ場所を知る手がかりにも使うことができると考えています.

© 2019 - Ryosuke SAKURAI / Department of Earth and Planetary Science, University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Tokyo 113-0033, Japan
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